“もっとも影響力のあるデザイナー30人”にも選出。
サーファー、デヴィッド・カーソン
Photo: Courtesy of David Carson Text: Junji Uchida
『Surf Club』 のロゴデザインは、これまでのお付き合いもあってデヴィッド・カーソンにお願いしました。
オールドスクールのサーファーなら記憶にありませんか? デヴィッドはグラフィックデザイナーとして活動をはじめた初期の頃、アメリカの『サーファーマガジン』や『ビーチカルチャー』といった雑誌のアートディレクターを務めていました。カーソン節とも言うべき個性的な世界観の作風が目に止まり、やがて『RAY GUN』のクリエイティブ・ディレクターに抜擢。そこからカーソン物語が始まります。
ちなみに、もともとはプロサーファーで、70年代にはハワイ・サンセットで開催された“スミノフ・プロ・アマ”に、カリフォルニアから2人招聘された選手のひとりとして参戦。インフィニティ・サーフボードからはシグネチャーボードも出ていました。ただ、あまり攻撃的な方ではなく、コンテスト以上にフリーサーフィンに全力を注ぎたいと思うようになり、コンペティションシーンから徐々に遠ざかっていきました。いちばん影響を受けたサーファーはミッキー・ドーラ。トム・カレンのスタイルや、今は無きアンディ・アイアンズや弟のブルースも好きなサーファーに挙げています。
26歳までは“グラフィックデザイン”という言葉すら聞いたことがなかったなく、初めての画材も薄汚れたトレイと着色剤、それに2枚の写真だけ。なんてことの無い写真をモチーフにするのが作風でもありますが、そこにルーツがあるのかも知れません。
『RAY GUN』に関わってからというもの、名だたるグローバル企業の広告デザイナーとして引っ張りダコに。本人は、趣味の延長で生計を立てていると笑いますが、マイクロソフトやボーイング、アルマーニにBOSEにPEPSIにNIKEなど、数え切れないほどの企業でクリエイティブ・ディレクターを歴任。やがて、ハーバード・ビジネススクールをはじめとするさまざまなアートやグラフィックデザインのワークショップで講演するようになり、グラフィックデザインやタイポグラフィの巨匠として名を馳せて行きました。
『Surf Club』第1号の巻末特集、“北極光”を撮影したクリス・バーカード同様、学術やエンターテインメント、デザインなどさまざまな分野の権威が世界に向けてプレゼンするTEDカンファレンスにも登壇。米デザインミュージアムは「もっとも影響力のあるデザイナー30人」のひとりにデヴィッドを選びました。30人にはサグラダ・ファミリアの建築家アントニ・ガウディや、東京五輪会場・新国立競技場コンペで勝ったものの却下になったザハ・ハディッド、ラウンジチェアで有名なチャールズ&レイ・イームズ、アップル製品のデザイナーのジョナサン・アイヴなどが名を連ねます。
アップルも創業30周年記念の際に、“30年史のなかでもっとも影響力のあるマックユーザー人”に選出。AIGA(米国グラフィック・デザイナー団体)の2014年アワードでは金メダルも受賞しています。
いまはFortune100(グローバル企業番付TOP100)にランクインするようなクライアント企業と気に入った仕事だけをやりながら、サーフィンのある暮らしをエンジョイ。『What Youth』や『Monster Children』、『Surfing Portugal』など、サーフィンに関わる雑誌のアートディレクションも楽しんでいます。
「『Surf Club』のロゴ制作も楽しかったよ!」とも言ってくれており、ゲストデザイナーとして何かやりたいということなので、近いうちにコラボしたいと思っています。お楽しみに!
デヴィッド・カーソンのウェブサイトはこちら!また、インスタは:@davidcarson