鴨川マルキのヒートアップ・サンデー!

サーフィンコンテストゆかりの地で、40年以上伝承され続ける大会

鴨川シティカップ2017

梅雨入り前の6月の第1日曜日に開催されるのが恒例。抜けるような空と青い海、緑の山の端が織りなすマルキの景観
ヒートアップする選手たちをリアルで応援しようと、首都圏以外の各地からも多くのギャラリーが集まった

東京五輪の種目にサーフィンが選ばれ、俄然盛り上がりを見せているコンペティションシーン。モダンサーフィンの限界を押し上げてきたのが、このカテゴリーの先鋭たちであることは昔も今も変わらない。その一方で、ランナーがフルマラソンに出場し続け自己ベストを追求するように、自らを追い込み挑戦し続けるサーフアスリートもいる。千葉鴨川で長きにわたり開催されてきた鴨川シティカップ。その2017年大会の模様をリポートしよう。

Date: 2017年6月4日(日) Place: 千葉鴨川・マルキ Photo: Dave Yamaya, Haruhiko Okubo(Award) Text: Junji Uchida

精度の高さが際立つ、ポスト・ミレニアム世代のアプローチ。

波のポケットをランプにテールアウトさせる平原颯馬。クローズドスタンス気味のブロウテールはとてもスタイリッシュ

温暖な気候と風光明媚な景色で、サーファーをやさしく迎えてくれる千葉鴨川。サーフィンの歴史は古く、そして深い。日本のサーフィンの発祥地のひとつとして知られており、1964年、ブルース・ブラウンが不朽の名作『エンドレスサマー』の収録のために来訪。1966年には全日本サーフィン選手権大会の第1回大会が開催されたことでも有名だ。ちなみに、同大会ジュニアの部を制したのは鴨川ドルフィン・サーフクラブの川井幹雄氏。団体優勝も鴨川ドルフィンが手にしている。そんな、サーフィンコンテストゆかりの地で、40年以上にわたり継続されてきた鴨川市長杯が、鴨川シティカップとしてリニューアルしたのは2014年のこと。その由緒あるコンテストの2017年大会が例年通り6月の第1日曜日=6月4日にマルキで行われた。次世代を担うゴールデンルーキーから、コンペティションサーフィンをライフワークとするベテランまで、200名以上が参戦。関谷利博や小川直久など鴨川が生んだプロサーファーも継承の一役を担いバックスタッフとして協力、コンテストをサポートしている。

鴨川を牽引する2人のミドルエイジ、関谷利博(右)と小川直久(左)も伝統を継承すべくバックスタッフとして支援
波の変化を分析し、取るべきポジショニングを考察。パドルアウトが許可されると同時に、勢い良く沖へと向かう

8クラスにわたるヒートを消化するため、前半戦は3ポイントに分けて進行。うねりはあるものの地形が今ひとつなのか、ポイントによってはショアブレイクダンパーでの戦いが強いられた。テイクオフポジションのさらに奥、抜けられない場所から突っ込む選手も多く、自分のパフォーマンスを出し切ることがなかなかできずにいる。それでも13分の制限時間内に、2本のライドをスコアした者が勝ち上がっていく。NSAのAAランク大会ということもあり、各クラスともハイレベルなサーフィンを見せているが、なかでも2017年度の強化指定選手に名を連ねるポスト・ミレニアム世代たちのアプローチは、トッププレイヤーに比べれば線こそ細いが、アウトラインの精度は高い。

「みんな上手いよね。自分に合ったサーフボードに乗っているし」と関谷利博。「オレなんて、その年の頃はAIPAのシングルフィンだもん」と笑う。AIPAとは60〜70年代にかけて活躍した伝説のハワイアン、ベン・アイパが創るサーフボード。ベンはスワローテールやスティンガーの考案者として知られている。

世界で戦えるジュニアの育成に尽力する田中樹。選手の一挙手一投足を見守り、指導すべきポイントを見抜く

ジュニア世代の試合環境が変わってきていることは周知の通りだ。関谷が冗談めいて言った、成長を早めるユース世代のサーフボード開発技術ももちろんだが、親に代わり最前線で戦ってきたプロサーファーがコーチとして活動する潮流も大きい。その先駆けともいうべき田中樹の姿が会場のマルキにあった。日本のジュニアレベルの底上げに、コーチとして尽力する彼と今年の3月、やはりマルキで行われた強化指定選手の強化合宿で話す機会があったのだが、その時言っていた言葉を思い出した。「選手をいっときだけの点で見るのではなく、一定期間の線で見ることで、指導すべきポイントがどこにあるかがより明確になる」。樹にとってこの鴨川シティカップも、線をつなぐ点の1つなのだろう。「いかにスマートに勝つか。いちばんスマートに勝つ方法を導き出す」とも言っていた。対戦相手を分析し、「こういうコンディションの時にはこういう戦い方をしてくるから、こうやれ」と、事前に戦略を組み立てているという。選手が1人ではなくチームで戦う強みに加え、長いキャリアのなかで培ってきた知見をジュニアの時期から習得できるのだから、アスリートとしての成長はおのずと早まる。

セミファイナルでフロントサイドリバースを見事に決めた小笠原由織。着地と同時にギャラリーから歓声が沸いた
パドルアウトする前に一礼をする平原颯馬。ステージに敬意を表する姿勢が勝利を導いたのかもしれない
今季4つめのタイトルを手にした中塩佳那。スーパー中学生の彼女に現在、向かうところ敵なし
湘南茅ヶ崎の層の厚さを感じた今大会。決勝進出こそ逃したものの、セミファイナルまで駒を進めた石丸乃晏

サーフィンの多様性を感じられるダブルステージ。

午前中は雲が多かったが、徐々に晴れ間が多くなり、やがて真っ青な青空が広がった。と同時に、南房総の大敵である南東の風が吹き出してきた。だが、潮が上げにまわりバンプも出てきたため、コンペティターたちにとっては自らの持ち味を表現しやすいコンディションになった。ロングメンおよびウィメン、BBウィメンのR1が消化した時点で3ポイントから2ポイントになり、ビーチに向かって左側の岩場寄りのAポイントと、そのややシーサイド寄りのBポイントでヒートが進行。セミファイナルまでは両ポイントで同じディビジョンのヒートが行われたが、ファイナルでは、例えば岩寄りのピークでショートのボーイズ・ジュニアたちがアグレッシブなアクションを繰り広げるその隣で、ロングのウィメンが優雅なノーズライドを披露するなど、サーフィンの多様性を感じられるダブルステージになった。ショートのみならずロングのサーフスターを輩出してきた、鴨川にふさわしい展開だ。

岩寄りの形の良いレフトをつかみ、波とシンクロしながら優雅にノーズライドしてみせる戸田成美
飯岡のスーパーキッズ、渡辺壱孔。決勝では大人顔負けのラウンドハウスを連発し9.5ポイントをマークし優勝。ベストライディング賞も獲得した
セミファイナルを前に愛らしい笑顔を見せる11歳のサーフガール、松岡亜音。結果、3位入賞を果たすことに
メン・シニアをはじめとするさまざまなクラスのサーファーたちが、コンペティティブサーフィンを楽しんだ

ハイエンドなファイナルとなったボーイズ・ジュニアクラスは、先に行われたISAワールドゲームス・フランス2017でR4に進出した小笠原由織らを下し、湘南茅ヶ崎の平原颯馬が昨年4位の雪辱を果たし優勝。キッズクラスはベストライディング賞をも獲得した千葉銚子の渡辺壱孔が勝利を手にした。ガールズ/ウィメン混合のウィメンクラスはスーパー中学生、中塩佳那が、3月のオールジャパンスチューデントサーフィントーナメント、4月のWSLビラボン・スーパーキッズ・チャレンジ、5月の全日本級別に続き、今月6月もビッグタイトルを手中に収めた。

ヒートの加熱振りは若年層だけではなかったが、とくにここ数年、緊迫した戦いとなるミドル〜シニア世代がエントリーするマスタークラスが盛り上がりを見せた。45〜51歳のマスター、52〜58歳のグランドマスター、59歳以上のカフナの3クラス混合戦を制したのは、マスターのカレントリーダー磯部康典。グランドマスターのランキングトップ坂本應尚が3位、カフナのトップランカー平野太郎が4位に入賞した。

強化合宿で亀田郁夫鴨川市長は、鴨川市としてマリンスポーツを盛り上げていくと挨拶していた。サーフィンにおける鴨川ブランドは揺るぎない実績がある。7月16日には5回目となる医療従事者のためのサーフィン大会、亀田カップ2017の開催が予定されており、サーフタウン鴨川の夏もいよいよメインシーズンを迎えていく。

激しいバトルが繰り広げられている海に対し、山の緑が映えるビーチは至ってのどか。初夏の心地良い空気が流れていた
ヒート数が多いことから通常15分のヒートを13分に短縮。忙しくライドする分だけジャッジも大変。お疲れ様です!
表彰式でコンテストの総評と、スポンサーや運営協力者への謝意を表する小川直久
鴨川シティカップを応援する行政を代表して亀田郁夫鴨川市長も登壇

 

RESULTS

【キッズ】
優勝: 渡辺 壱孔(千葉銚子)
2位:佐藤 利希(湘南藤沢)
3位:長沢 侑磨(三重)
4位:石見 天獅(千葉東)

 

【ボーイズ・ジュニア】
優勝: 平原 颯馬(湘南茅ヶ崎)
2位:三輪 鉱也(静岡2区)
3位:小笠原 由織(湘南茅ヶ崎)
4位:古川 海夕(千葉東)

 

【ウィメン】
優勝: 中塩佳那(山形)
2位:馬庭 彩(湘南茅ヶ崎)
3位:松岡 亜音(千葉南)
4位:澤田 七奈緒(湘南茅ヶ崎)

 

【メン・シニア】
優勝: 古田 龍之助(千葉南)
2位:中村 秀伸(湘南藤沢)
3位:前鶴 大享(湘南藤沢)
4位:山口 大介(千葉銚子)

 

【マスター】
優勝: 磯部 康典(湘南西)
2位:川名 幸則(千葉南)
3位:坂本 應尚(千葉南)
4位:平野 太郎(湘南鎌倉)

 

【ロングメン】
優勝: 中井 晴(大阪)
2位:稗田 瞬(横浜)
3位:土屋 昌弘(相模原)
4位:丸山 肇(埼玉南)

 

【ロングウィメン】
優勝:鈴木 美和子(湘南藤沢)
2位:飯山 保奈実(湘南藤沢)
3位:戸田 成美(相模原)
4位:石井 志延(静岡2区)

 

【BBウィメン】
優勝: 藤田 佳奈(湘南藤沢)
2位:岡田 吹羽子(山口)
3位:大角地 一美(東京)
4位:佐藤 千夏(千葉西)

 

【ベストライディング賞】
渡辺 壱孔(キッズクラス)