フランスCT時に開催されるエアー戦〈レッドブル・エアボーン〉出場選手たち。
Text: Junji Uchida
いよいよはじまりましたね、CTフランス・イベント。まずはウイメンズのロキシー・プロから。ステファニー・ギルモアがレイン・ビーチリーに並ぶ過去最多、7度目のワールドタイトル取りそうなだけに、『サーフクラブ』的には気になるところ。 2005年、スナッパーでのロキシープロで、当時女子高生だったステフはトライアルから勝ち上がり優勝し鮮烈デビュー。2007年にはルーキーイヤーにしてチャンピオン獲得という、前代未聞の偉業を達成。またゴリゴリのオージーが出てきたかと思いきや、サーフィンは全然攻撃的でなく、ナチュラルで美しく流れるよう。アンドリュー・キッドマンの作品『シングル』では、デイブ・パーメンター・シェイプのシングルフィンで、マイケル・ピーターソンとリンクするスタイリッシュなサーフィンを披露。いまのジャッジ・クライテリアではスタイルは評価されないけれど、チャンピオンはスタイルマスターでもあってほしいなと『サーフクラブ』は思います。
すみません、ステフ愛がすぎて、前置きが長くなってしまいました。
で、今回のフランス戦のもうひとつの目玉はエアー・イベント、その名も“レッドブル・エアボーン”。センスいいですよね、エアボーンというネーミング。数年前に脚光を浴びた、カリフォルニア・ニューポートビーチの蛍光色時代をクローズアップした『エコービーチ』を想起させます。若い世代はレイドバックした時代にインスパイアされますからね。
オヤジ世代はご存じの“エアボーン”という言葉、これは80年代前後に使われていたエアーの呼び方です。ポッツやフレッチャーがラディカルと形容されてたあの頃ですね。そういえば、90年代のはじめにクリスチャン・フレッチャーに、「なぜASP=現WSLに出ないの?」と聞いたところ、「ASPはエアーを評価しないから」と答えてました。時代が早すぎたんですね。
さて、レッドブル・エアボーンの出場者のうち、ワイルドカード枠の2人も選定され、全員の顔が出揃いました。短めのプロフィールと動画クリップをまとめたのでご覧ください。エアーの進化もハンパないです。長い作品はエアーのところからはじまるようにしてありますが、全篇通して見ると、よりどんなスタイルなのかわかるのでオススメです。ちなみにコンテスト自体は10月5日〜10日のあいだで開催される予定です。
- アルビー・レイヤー(HAW)
- チッパ・ウイルソン(AUS)
- マイキー・ライト(AUS)
- ノア・ディーン(AUS)
- マット・メオラ(HAW)
- メイソン・ホー(HAW)
- コロヘ・アンディーノ(USA)
- グリフィン・コラピント(USA)
- ヤゴ・ドラ(BRA)
- イタロ・フェレイラ(BRA)
- フィリッペ・トレド(BRA)
- ジョーディ・スミス(ZAF)
- エリック・ガイセルマン(USA)
- ヘクター・サンタマリア(PRI)
- カラニ・デイビッド(HAW)
- ジャック・フリーストーン(AUS)
- リーフ・イングストローム(USA・ワイルドカード)
- セバスチャン・ウィリアムス(ZAF・ワイルドカード)
■アルビー・レイヤー(ハワイ)
1991年6月9生まれ。マウイ島出身。まだ歩けない赤ちゃんの頃から父親と一緒にロングに乗っていたアルビー。エアーはもちろん、ジョーズのモンスターバレルに突っ込む猛者としても有名。テイラー・スティールのビデオコンテスト・プロジェクト『インナーセクション』で、540°アリーウープを初めて成功させたとして勝者になった経歴を持つ。
■チッパ・ウィルソン(オーストラリア)
1987年8月28日生まれ。ゴールドコースト・キャバリータ出身。2010年、特大のビッグスピンをメイクした映像がバズり、先鋭的な一発ワザで勝者を決める『カスタム・エアーストライク』にノミネートされる。また、当時スポンサーだった〈アナログ〉がリリースしたシグネチャービデオ『NOW』で、2010年『サーファーポール』のブレイクスルー・パフォーマー賞を受賞した。
■マイキー・ライト(オーストラリア)
1996年9月14日生まれ。ニューサウスウェールズ・バリナ出身。兄のオーウェン、姉のタイラーはともにCTツアーで活躍しているエリート兄弟のひとり。マイキー自身も今季はワイルドカードで出場を重ねていて、2018年10月3日現在のランキングは11位で来季のCT入りも目前。フリーサーフィンでのパフォーマンスはとにかくイノベーティブ、サーフィンの世界で初めてマックツイストをメイクした。
■ノア・ディーン(オーストラリア)
1994年2月8日生まれ。ゴールドコースト・クーランガッタ出身。父親は豪殿堂入りコンペティター/シェイパーのウェイン・ディーン。ホームのDバーでハイパフォーマンスはもちろん、オルタナティブボードによるスタイルサーフも追求。2014年『サーファーポール』ブレイクスルー・パフォーマー賞受賞。先日テキサスのBSRリゾートで開催されたエアーイベント『スタブ・ハイ』で優勝を手にした。
■マット・メオラ(ハワイ)
1989年6月7日生まれ。マウイ島出身。アルビー・レイヤー同様、マウイを代表する革命的エアリストでありジョーズのチャージャー。2歳でサーフィンをはじめたものの、当時はプロスケートボーダーに憧れていた。父親が仕事でカウアイ島に行ってしまい、パークに行く手段がなくなったため14歳からサーフィンに傾倒。2010年『インナーセクション』でクレイグ・アンダーソンを破って優勝。賞金10万ドルを手にした。 MATT MEOLA – NUMB from Meola on Vimeo.
■メイソン・ホー(ハワイ)
1988年9月1日生まれ。ハワイ・オアフ島出身。父親はトリプルクラウンの覇者マイケル・ホー、叔父は世界チャンピオンのデリック・ホー。さらに妹もコンペシーンで活躍するココ・ホーというサラブレッド。10ftのパイプラインを5’9”の極短ボードでスイッチしたり、ゴリゴリの岩場でサーフィンするなど、メイソンのスタイルは見ていて飽きない。2015年バックドアシュート優勝、同年ボルコムパイプ2位。
■コロへ・アンディーノ(アメリカ)
1994年3月22日生まれ。カリフォルニア・サンクレメンテ出身。グロム時代は次期アメリカを担う神童として注目を浴びた。15歳で雑誌の表紙を飾り、大手デパート〈ターゲット〉や〈ナイキ〉と契約。アマチュア史上最大と囁かれた。アクロバティックで攻撃的なスタイル。どでかいアプローチが基本。CTでの優勝はないものの、表彰台に上がること度々。当の本人は雑誌も優勝トロフィーも気にしてないとか。
■グリフィン・コラピント(アメリカ)
1998年7月29日生まれ。カリフォルニア・サンクレメンテ出身。2018年からCTを転戦している最年少のルーキー。19歳までにCT入りすることを目標に掲げ、実現した努力家。ホームのローワーズで見せる高速ボトムターンは誰よりも長く、あのハービー・フレッチャーも“キング・オブ・トレッソルズ”と認めているとか。ビッグウェイブも得意で、2017年、カリフォルニア出身者で初のトリプルクラウンを獲得している。
■ヤゴ・ドラ(ブラジル)
1996年5月18日生まれ。フロリアノポリス出身。今季からCTを転戦しているツアールーキー。サーフィンをはじめたのは11歳で、まわりより6〜8年遅咲き。が、デ・スーザらのコーチを務める父親が撮りためたフッテージをはじめ、アンディやケリー、デーンのクリップを貪るように観て吸収。結果、ブラジル初のプロのフリーサーファーとして名を馳せた。自国のエアーコンテストで、ジョンジョンやメディナ、ファニングが参加するなか3位をマークしている。
■イタロ・フェレイラ(ブラジル)
1994年5月6日生まれ。バイーア・フォルモーザ出身。2015年ワールドツアーのルーキー・オブ・ザ・イヤー。今季はベルズとバリ2戦で優勝する好調ぶり。168cm/68kgと小柄ながら、爆発的なサーフィンはCT選手のなかでもトップクラス。バックサイドアプローチに長けていて、あり得ないほど高く飛んでから回す過激なローテートや、クリティカルポジションに猛烈に当て込んでからのフリーフォールはオーディエンスを興奮させる。
■フィリッペ・トレド(ブラジル)
1995年4月16日生まれ。サンパウロ・ウバトゥバ出身。カリフォルニア・サンクレメンテ在住。2度のナショナルチャンプ歴を持つ父のもとに生まれたサラブレッド。現在CTランキングトップ、初めてのワールドタイトル獲得に向けて闘志を燃やす。いかにもブラジリアンな熱血エアーは、攻撃的にして精度も高い。ジョンジョンやメディナとともに、モダンサーフィンの限界を引き上げる時代の寵児。
■ジョーディ・スミス(南アフリカ)
1988年2月11日生まれ。ダーバン出身。若き巨匠フィルマーだったカイ・ネビル世代で、いまなお現役で活躍するCTアスリート。デビュー当時はデーンかジョーディーかとシーンを騒がせた。優勝こそないものの、2010年はケリーに、2016年はジョンジョンに次いで最終ランキング2位。アグレッシブながら、どこまでもスタイリッシュ。190cm / 88kgの身体を活かした優雅なエアーを、パンチーなホセゴーの爆裂ビーチブレイクで披露してほしいところ。
■エリック・ガイゼルマン(アメリカ)
1988年3月9日生まれ。フロリダ・ニュースマーナビーチ出身。チッパや弟のエバンとともにプッシュし合い、革新的なエアリストとして名を馳せるフリーサーファー。2006年のオークリー・プロジュニアで優勝するなど、コンペでも活躍していた。2007年の『サーファーポール』で『All In The Family』という作品で“最優秀ラディカル・マニューバー賞”を受賞。クリエイティブで表現豊かなアプローチは、スケートからインスパイアされたもの。
■ヘクター・サンタマリア(プエルトリコ)
1992年生まれ。サンフアン出身。クレイグ・アンダーソンとトレン・マーティンをミックスしたような、洗練されたクローズドスタンスが美しい若きスタイルマスター。2015年、トム・キャロルが四国のリバーマウスをスコアしたフィルム『Kawa No Me(川の目)』に出ていたので、覚えている方も多いはず。世界から注目を浴びたバックサイドのバックフリップ、“フリッピー・モッピー・フリップ”をホセゴーでもぜひ決めてほしい。
■カラニ・デイビッド(アメリカ)
1997年11月4日生まれ。コスタリカ出身。プロサーファーでありプロスケーター。さらに、ドラマーとして音楽活動もする多才の持ち主。生後18ヶ月で父親と一緒にファーストライド。オアフに移住したのちコンペをはじめ、5歳で優勝。スケートをやり出したのも5歳のとき。X Games参戦のほか、2012年にはISA世界ジュニアU16で優勝。2013年、15歳のときにはパイプラインでのプロジュニアも制覇している。スケートライクなエアーは圧巻。
■ジャック・フリーストーン(オーストラリア)
1992年4月3日生まれ。ゴールドコースト・クーランガッタ出身。パーコやファニングにインスパイアされて育ったサーフエリート。2010年&2012年、WSLワールドジュニアのタイトルを獲得。2016年にCTにクオリファイする。が、2017年は不調で今季は脱落。QSランキングは2018年10月2日時点で16位。軽快かつ精密で、シームレスなエアーは無駄がなく、流れるように美しい。そして、奥様のアラナ・ブランチャードも美しい。
■リーフ・イングストローム(アメリカ・ワイルドカード)
1989年生まれ。ニューヨーク・モントーク出身。プエルトリコ在住。2009年、プエルトリコで開催されたボルコム・キャットフィッシュ・コンテストのプロアマ部門で優勝。2011年の『インナーセクション』での連発ロデオが話題になった。セレブのサーフリゾートとして知られるニューヨークのモントーク育ちだけに雰囲気はアーバン。その一方で、フィッシングも楽しむアウトドア志向でもある。
■セバスチャン・ウィリアムス(南アフリカ・ワイルドカード)
2000年5月3日生まれ。メキシコ出身。2015年のクイックシルバー・キング・オブ・グロムのチャンピオン。幼少期はカリフォルニアでサーフィンして育ったが、現在は父親の母国、南アフリカ・ダーバンで暮らす。好きなポイントはJベイで、サーファーはジョーディ・スミス。サーフィンはパワフルかつスタイリッシュで、エアーもスムーズ。母親の生まれたメキシコ代表として、2020年の東京オリンピックに出場することを目指しているという。