手に汗握る快進撃。

Great Job! Congrats Connor!

柄沢明美・元JPSAチャンプの愛息コナーが、WCTフィジーで準優勝!

昨年のFIJIプロは、地元シドニー・クナーラのバイト先のサーフショップでウェブ視聴していたとか。1年後の表彰台にまさか自分の姿があるとは想像していなかっただろう。Photo. WSL / Kelly Cestari

みなさん、昨日は仕事が手に付かなかったんじゃありませんか? なんてったって1985年のJPSAグランドチャンプ、アケちゃんこと柄沢明美さんの愛息コナー・オレアリーの快進撃が、朝の8時前からずっと続いたんですから。クオーターファイナルは通勤電車の中で、セミファイナル以降は職場の影に隠れてスマホを見ながら念力を送りまくっていたはず。念力が尽きてしまったのか、残念ながらファイナルはウィルコことマット・ウイルキンソンに逆転負け。だけど、感動しました。興奮をありがとう!

Text: Junji Uchida

ケリーやパーコなどビッグネームを次々倒していった、スムースにして大迫力のカービングターン。Photo. WSL / Ed Sloane
アワード恒例のシャンパンシャワーではウィルコとともにストーク。Photo. WSL / Kelly Cestari

コナーが金字塔を打ち立てたのは、ケリー・スレーターのライフスタイル・アパレル〈アウターノウン〉が冠になったことで話題になった、WSLチャンピオンシップツアー第5戦・FIJIプロ。ラウンド3でそのケリーを下し、ラウンド4ではジョアン・ドゥルー&ジョエル・パーキンソンを押さえて1位で通過。『Surf Club』が抱くコナーの印象は、おっとりしていて控えめ。それがサーフィンにも表れていて、ていねいに描くラインはとてもスムース。しかも、身長185cm/体重85kgと大柄のため、ターンはクリーンながらもダイナミックで、トラックも極めて深い。それにはコーチのルーク・イーガンの影響があるのかも。コナーほど背は高くはないけど、180cm/85kgの体を操りクローズドスタンスで表現するルークのサーフィンは、しなやかで芸術的。アンチ・アグリー派のサーファーにとっては憧れのフォームでしたよね。

ヒート中のコナーに戦略を指示するコーチのルーク・イーガン。Photo. WSL / Kelly Cestari

詳しいリポートはこちらでご確認いただき、ここでは最終日のコナーの戦いを振り返ります。

クオーターの対戦相手はコナー同様、今季ツアー入りを果たしたジョアン・ドゥルー。フランスのビアリッツに程近いバイヨンヌという街に住んでいる青年で、所属はハセゴー・サーフクラブ。解説にはケリーも加わっていて、このヒートは2人ともルーキーでグーフィー同士だし、いい対決だとコメント。コナーについては、自分を負かしたんだから明らかにPretty Goodと談笑していました。さらに、ジョアンのほうが経験値はやや高いけど、コナーにはアウターノウンの第1回目のFIJIプロの優勝に挑戦して欲しいという嬉しい言葉も!

試合はロースコアながら終始コナーがリード。ただ、実況のケリーもミスったと指摘していたように、2本合わせて2ポイント台しか出せていないジョアンが、まあまあスコアが出そうなライドをした直後に、点が出そうにない波に手を出して優先権を譲ってしまうことに。結果、ジョアンは3.39pt出せば逆転可能で、しかもプライオリティを持つという状況。終了1分前を切ったところでジョアンがインサイドの小さい波をキャッチ。5つのカービングターンをしたのち1発当ててフィニッシュ、勝利を確信して手を叩いた。が、スコアは2.93pt。悔しそうな表情を浮かべていたジョアンですが、その後すぐFacebookに“コナー、おめでとう!”とポストしていたとか。

セミファイナルは、やはりスムースでクリーンなサーフィンが美しい、パーコことジョエル・パーキンソンとの一騎打ち。パーコはオープニングウェイブを掴むと無駄の無いカービングターンを重ね、バレルになったところですかさずグラブレール。6.93ptと出だしはまずまず。続いてコナーの番。特大のカービングターンを決めて、さあ2発目とダウンザラインしかけたところで、まさかのフィンスリップ。それが引き金になったのか、後のインタビューでコナーは、このヒートがこれまでの人生でいちばん戦闘的だったと語るほどオンファイア。バレルライドに狙いを定めたその次の波で7.40pt、プライオリティのない状況で掴んだ次の波ではスピーディなバレルを完璧にトレースし、8.00ptのエクセレントをマーク。ついに頂上が見えてきます。

Photo. WSL / Kelly Cestari

そして、いよいよファイナル。開始直後にウィルコが波を掴むもスコアは伸びず、4.00pt。対するコナーは、特大のカービングターンを含む4発のアプローチを決め、最後の1発でワイプアウトしたものの8.33ptをスコア。期待が一気に高まります。一方のウィルコも圧巻で、サイズのある波をキャッチするとフルスロットルで駆け抜け、ポケットが現れたところで猛烈なカービングターン。8.57ptのエクセレントで応戦します。トレードウインドが強まる中、コナーはその後、1本の波で2つのチューブを抜けるダブルバレルで再び逆転に成功。激しいデッドヒートは残り5分を切るまでコナーがリードを保ち、応援するみんなが「時計よ、速く回れ!」と念じるも束の間、ウィルコに向かってセットが接近。ブレイクの流れを確かめながらテイクオフをすると、「これがパワーサーフィンさ」と見せつけるべく、クラウドブレイクのソリッドな波が悲鳴を上げるほどのカービングターンを披露。エンドセクションまでに、さらに際どい2発のアプローチを決めて8.03ptをスコアし逆転。2人の素晴らしいサーフィンに息つく暇もありません。しかし、視聴者の余力も尽きてしまったのか、「セットよ、入ってきてくれ!」という念力も届かずヒートは終了。ウィルコに握手を求めパドルしていくコナーと、後輩の健闘を称えるウィルコの2人のスポーツマンシップに、胸がジーンとなりました。

ファイナル終了後、お互いの健闘を称える。両者とも笑顔であることから、ナイスゲームだったことが伺える。Photo. WSL / Ed Sloane

去年のFIJIプロはバイト先のサーフショップでウェブキャストを視聴していたというコナー。日本のプロサーファーがオーストラリアの母と慕うアケちゃんの息子が、ケリーがスポンサードするCTイベントで、自らのブランドの板で戦うケリーを打ち破り決勝をメイクした現実に、時代の流れを感じた次第。

You made it! Great Job! Photo. WSL / Kelly Cestari

最終日のハイライト映像(英語)はこちら

WSLによるコナーの「決勝への道のり」映像(英語)はこちら