【スポットガイド】リオの喧騒から脱出できるブラジル・サーフィンの首都〈サクアレマ〉

ナザレス聖母教会が象徴的なバヒーニャ。ソリッドなスウェルが入ると個性溢れるウェッジーなバレルが姿を表わす。Photo: WSL / Poullenot


Text: Junji Uchida

 

オーストラリアレッグが終了するとCTツアーは、やはりモダンコンペテョンの聖地ブラジル、リオ・デ・ジャネイロに移動する。2000年代にうねりの種が発生したブラジリアンストームは、暴風域をQSからCTにまで拡大。いまや世界を席巻する強国になったことはご存知のとおりだ。アメリカやオーストラリアといった先進国に軸足を置いてきたWSLにとって、新興諸国BRICsのブラジルは大切な成長市場。が、いまなおQSレベルでは選手への大会賞金も未払いになるケースがあるなど、問題があることも事実。下水インフラによる水質汚染や、出口の見えない治安情勢などの不安材料もある。一昨年には、コナー・コフィンとカリッサ・ムーアが銃による発砲事件を目撃。そうしたネガティブ要因が引き金になり、選手たちの安全を優先したWSLは昨年、開催地をバーハ・デ・チジュカから、リオの街から100kmほど東に離れたサクアレマに移した。

南米大陸で言えばこのあたり。ブラジル第2の都市リオ・デ・ジャネイロから100kmほど。Artwork: ©SurfClub
かつての開催地バーハ・デ・チジュカ同様、南向きに開けているサクアレマ。サーフシーズンは秋から春にかけて。Artwork: ©SurfClub

 

60年代から礎を築いた、傑出した血筋のある土地柄。

大西洋に面したサクアレマはサンゴの海と白い砂浜に囲まれた、気絶するほど美しいビーチだ。しかし、ダンス、酒、海水浴、日光浴にふけるリオの住人であるカリオカの多くは、サクアレマをスルーしてさらに東に進んだブジオスに行ってしまう。70年代にヒッピーが軍事独裁政権から逃亡したブジオスは、現在はヒップなリゾートエリアとして有名。それゆえ、ブラジル有数の波が割れ、60〜70年代に多くのコンテストが開催されてきたブラジルサーフィンの首都であるサクアレマは、歴史に刻まれた遺産との認識が強い。60年代にリオを旅したサーファーたちが、サクアレマにあるプライア・デ・イタウナのクリアな水と素晴らしい波を発見し、その地にベース基地を築いた。ローカルイベントにはじまり、国レベルの試合や世界戦などさまざまなコンテストをホストしてきた、傑出した血筋のある土地柄だけに残念だ。

南東寄りの大きいスウェルが入るとグーフィーのポイントブレイクが本領を発揮するイタウナ。小さいときはやや右手のビーチブレイクで、レギュラー&グーフィーともサーフィン可能だ。Photo: WSL / Smorigo
オーバーヘッドのうねりでスイッチが入り、トリプルオーバーまでホールドするブラジル屈指のレギュラー、バヒーニャ。Photo: WSL / Smorigo

サクアレマを象徴する建造物にナザレス聖母教会がある。かつてこの地で暮らして来たのは、先住民族のタモイオ族。彼らは何千年ものあいだ、海岸線に激しく押し寄せる波が来ようと漁師として、またウォーターマンとして技術を磨いてきた。16世紀、当時ブラジルを植民地として統治していたポルトガルのドン・ジョアン3世が来訪。彼はタモイオ族のカヌー技術に恐れおののいていたという。が、タモイオ族からの猛反発を受けながらも、所有権はポルトガルにあると主張。基盤をつくるとともに、1630年にナザレス聖母教会を設立した。当時から400年もの月日が過ぎているにもかかわらず、この教会は奇跡的にほとんど変わっていない。リオの喧騒からクルマで1時間ほどの美しい自然は、開発から逃れてきたのである。

ブラジル戦では他の場所に比べて大観衆がイベントにとって重要なファクト。その理由はサッカースタジアムのように、ビーチ中がうねるような歓声で熱狂するから。Photo: WSL / Smorigo
1992年からワールドツアーで展開しているリオ・デ・ジャネイロ戦。2002年以降はサンタ・カタリナなど、ブラジル・イベントは別の地域で行われていたが、2011年に男女ともリオに戻ってきた。

 

コンスタントさで優位なイタウナがメインブレイク。

Photo: WSL / Poullenot

 サクアレマにはイタウナとバヒーニャという2つの波が存在する。ビーチの東側に位置するイタウナは、バヒーニャに比べてコンスタント。年間150日はサーフィン可能だ。海底は岩混じりのサンドボトムで、砂を流し理想的なサンドバーをつくるのに最高の岩棚がある。許容サイズも幅広く、小さいときはレギュラー・グーフィーとも割れる典型的なビーチブレイク。グランドスウェルが入ればグーフィーのロングウェイブに姿を変える。掘れた速い波はパワフルで面白く、距離としては標準で50〜150m。いいときには150m〜300mほど乗れることもある。潮回りとうねりのサイズ次第で、ダブル〜トリプサイズまでホールド。クリーンかつソリッドな10〜12ftでのセッションになることもざらだ。

 

ビッグスウェル到来時にはバヒーニャがオン・ファイア。

Photo: WSL / Poullenot

が、西側の教会寄りにあるバヒーニャも負けてはいない。サンゴ礁に沿ってチャンネルが流れるゾーンで割れる波はブラジル屈指と言われ、ひとたび姿を表せばつねにサムズアップ状態。ソリッドな南西からのスウェルが求められるが、ブレイクしはじめたらウェッジーな個性的な形の、急激なパワーを伴う波になる。

海から見るナザレス聖母教会の景色は最高に美しく、プレミアムな波が夕日に溶け込むドラマチックな時間帯は驚くほど芸術的。ただ、平日はさほど混まないまでも、週末はさすがに混み合う。世界共通のグローバル・ルール=ローカルへの敬意を忘れずエンジョイしたい。

Artwork: ©SurfClub

 

 SPOTCHECK
【ベストシーズン】秋〜春(2スポットとも)
 
【レベル適正】上級者(3スポットとも)
●イタウナ:初〜上級者
●バヒーニャ:中〜上級者

 
【ボトム】砂 + 岩棚(2スポットとも)
 
【ベストサイズ】
●イタウナ:胸〜オーバーヘッド
●バヒーニャ:オーバーヘッド〜トリプルオーバー

 
【スウェル】
●イタウナ:南西〜東南東(ビーチブレイク)、東南東〜南東(ポイントブレイク)
●バヒーニャ:南南西(ポイントブレイク)・南〜南南東(ビーチブレイク)

 
【風向】
●イタウナ:北〜北東
●バヒーニャ:バヒーニャ:北〜北西

 
【潮回り】ロー〜ミッドタイド(2スポットとも)


 
【うねり】
サクアレマを含むリオ・デ・ジャネイロ沿岸地域は、4月〜10月にかけて南〜南東から入ってくる南極スウェルをキャッチできる方角に開いている。それゆえサーフシーズン中は2〜10フィートクラスの波がブレイクしていることがほとんど。また、冬の終わりの低気圧がもたらす東うねりや、高気圧により強烈な東風が吹くことで発生する東北東のグランドスウェルにも期待できる。南大西洋に熱帯サイクロンができることもあるがレアなケースだ。

 
【風】
サクアレマのポイントは北西〜北東の風が理想。穏やかな風ならオンショアでも悪くない。サーフシーズンは東風が吹くことも多いが、イタウナは東側の岩が風よけになってくれる。同様にバヒーニャも、西側のジェティが西風を交わしてくれる。高気圧が発生しているときは終日穏やかな風が吹き、朝は軽いオフショアになることが多い。午後はオンショアになるというパターンだが、あまり強くならない。

 
参考:STORMRIDER SURF(英字)、WSL(英字)
書籍購入:AMAZON(英語版)

 

公用語がポルトガル語というのもあって、締めにふさわしい、わかりやすい動画のスポットガイドが見つからない状態(筆者の情報収集能力が問題かも・・・すみません)。が、いい感じのドローン・クリップが見つかったのでチェックしてみてください。