【スポットガイド】2分超えのロングライドも! 2.1kmの波の正体〈スケルトン・ベイ〉

1本乗るだけで足がパンパン! ラスト・フロンティアで炸裂する完璧なグーフィー。

スケルトン・ベイ - コア・スミスの写真
「これでもか! これでもか!」と計8回のバレルが巻いてくる。時間にして約2分の至極の波だ。コア・スミス。

50周年を迎えた格式あるコンテストのQS10000や、ケリー・スレーターの復帰説高まるJベイでのCT戦など、いま世界がいちばん視線を向けているアフリカ。そこにもうひとつ話題のタネが。ナミビアのスケルトン・ベイ。ロングライド・パラダイスとして知られるこのポイントが最近火を吹きまくっているという話。そこで、今回のスポットガイドは、以外や知らないスケルトン・ベイに迫ります。

Text: Junji Uchida

 

1本の波でナント8つのバレルライド! 先週コア・スミスがスコアしたドンキー・ベイ、通称スケルトン・ベイのライディングに、グーフィーフッターたちは口をあんぐり開けながら見とれたはず。

その後、またしてもストームによるスウェルが届き、ネーザン・フローレンスらが延々と続くバレルをエンジョイ。「脳が崩壊した!」とのコメントを添えて、GoPro映像をインスタにアップしている。

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〈Google Earth〉で発見されたのがメジャー化のはじまり。

コンディションが決まれば3kmは乗れるといわれるJベイ。レギュラーフッターの理想郷として有名なJベイが、南アフリカにあるのは周知のとおりだ。一方、2.1kmの距離を誇るスケルトン・ベイはナミビアに位置。1本乗ったら足がパンパンになる稀有のロングウェイブは、いずれもアフリカ大陸でブレイク。そのポテンシャル、恐るべし!

スケルトン・ベイが脚光を浴びたのは2008年に遡る。いまや『サーファーマガジン』のビデオ部門に収束されたアメリカのユース向けメディア『サーフィング』の紙媒体で、〈Google Earth Challenge〉という波探しコンテンツを打ち立てていた。当時編集長だったエバン・スレーターが、その企画でコリー・ロペスらを引き連れて波を当てたのがはじまり。取材文からスケルトン・ベイの波の長さがありえないレベルなのは伝わってきた。が、ブレイクの全体像を捉えた写真がなかったために、2.1kmのなかに8つのバレルを備える壮大なスケールは想像できなかった。その点、いまはドローンやGoProにより、2分を超えるライディングの全貌が把握できる。時代は変わったなぁと、オールドスクールの筆者はしみじみ思う。ちなみにエバン・スレーターは、その取材を最後にハーレーに転職。新たな撮影スポットを発掘するという置き土産を残してサーフメディアの世界を卒業していった。

Google Earthで見たスケルトン・ベイの写真。
(上)Google Earthで見たスケルトン・ベイの写真。しっかりラインナップしているのが確認できる。(下)アラン・バン・ガイセンのインスタにアップされているThe Dayのラインナップ。

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5本乗り切ったら10.4km。でも、帰りも同じだけ歩くことに。

で、スケルトン・ベイ。南アフリカのフォトグラファー、アラン・バン・ガイセンによると、そこは幻影のような場所だとか。ポイント名は後付けで、ナミビアの不毛の砂漠地帯の海岸線:スケルトン・コーストに由来する。が、実際のプレイクは、スケルトン・コーストから何百キロも離れた未舗装道の先にある。80年代後半から90年代はじめにかけて、漁師やウインドサーファー偶然発見。彼らはここをドンキー・ベイと呼んでいた。しかし、アランはスケルトン・ベイのほうがしっくりくるという。その理由は、座礁した難破船や、砂漠に生息するオオカミやジャッカル、ビーチに点在するアザラシの死骸など、どんな動物にとっても生き抜くのが過酷なところだから。

「これが現実のわけがない!」

長い海岸線に備わる完璧なサンドバーに沿って、規則正しく延々と割れ続けるシリンダーバレルを初めて見たサーファーは、皆一様にそう叫ぶ。そして、実際に乗ってみて、この最高の波が夢でないことを確認するため、もう1本乗りたくなるという。

そんな世界屈指の波にもかかわらず、混雑はわずか。強烈なカレントがあるのが原因で、気まぐれな波をつかむのは比較的難しい。40〜50人のサーファーがラインナップしていても、乗られずに割れていく波も多い。また、1本乗ったら仲間と数時間会えないこともある。乗るたびに、ピークまで2.1kmの道のりを徒歩で戻る必要があるからだ。「四駆で戻ればいいじゃん」という話だが、環境や倫理観を理由に2013年から禁止に。プロサーファーがゴソッと押しかけてきてクルマでピストン輸送されたら、もはや他のサーファーに波は回らない。うまく循環させるには必要なローカルルールだ。それゆえ。仮に5本乗り切ったら歩行距離は10km以上。ヘトヘトになるのは確かだが、一生忘れられない旅になる。

「歩いて戻るくらい、なんてこと無い。よし、次の休みに行くか!」

が、早合点は要注意。実はいつもパーフェクトな波が待ってくれているわけでもない。クレイグ・アンダーソンは過去3度ほどスケルトン・ベイに行った経験の持ち主だが、良かったのは1度きりだそう。テイクオフゾーンで10人ほど波待ちする輩をよそに、そこよりずっと奥からパドルアウト。20分ものあいだ漂った末にキャッチした波が最高だったという。5’6のヒプトクリプトで、ポイントの端から端まで乗り切ったライディングは、スケルトン・ベイのいいときを逃さない写真家のアランにして、世界観が変わったそうだ。

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また、クレイグもアザラシの死骸を見たそう。しかも、サメにがぶりと噛まれた半身の屍だったという。Jベイもそうだが、スケルトン・ベイも世界屈指のシャーキーなポイントであることをお忘れなく。

 

 SPOTCHECK
【ベストシーズン】5月〜9月
【レベル適正】上級者
【ボトム】砂 (極浅)
【ベストサイズ】レベルによる(適応サイズ:3ft〜10ft)
【スウェル】西〜南西
【風向】南東〜南

【潮回り】すべて
【うねり】
ナミビアは最後のサーフ・フロンティアに挙げられる。1500kmにおよぶコーストラインには、うねりがコンスタントに届いているにもかかわらず、未だにほぼサーフィンされていない隔離地帯。沿岸の水は冷たく、カレントも強くて霧が濃いときが多い。たくましいサメが生息していることは明らかだが、調査すらされていないというのが現実のようだ。

南大西洋からのスウェルは、小さいサイズであれば1年を通じてほぼ毎日入ってくる。ベストシーズンは5月〜9月で、6〜10ftの南西うねりにより、クラシックなブレイクが姿を表わす。
【風】
真っ直ぐなナミビアの海岸線は、風に対してセンシティブ。そこが厄介な点だ。通年で南混じりの風が吹き、9月〜11月にかけては南東に振れる。ただ、スケルトン・ベイは緩やかだが湾になっているおかげでオンショアを交わしてくれる。ちなみに、潮の干満差は6ftにもおよぶことも記しておこう。

参考:STORMRIDER SURF(英字)
書籍購入:AMAZON(英語版)

 

最後に締めの動画を。冒頭のコアの8発バレルはリップが分厚くヘビーだけど、このビデオのブレイクは多少ソフトな印象・・・。いろいろとリスクはありそうですが、グーフィーフッターのサーファーは狙ってみる価値はある波ですね。

PERFECTION FROM ABOVE from St John Visual on Vimeo.