いまなお謎の完璧波で、ミック・ファニングとタイラー・ライトがフルスロットル!『RETURN TO THE SNAKE』
Text: Junji Uchida Reference: Rip Curl – Ain’t No Wave Pool
去年2月に公開された〈リップカール〉のThe Searchシリーズ『AIN’T NO WAVEPOOL(ウェーブプールじゃないよ)』。一見するとサーフランチの波に似てるのは確か。スピーディな波が形良く、バンバン巻き上げてくる様子はマシンブレイクそのもの。しかも、そこにはミック・ファニングひとりだけ。レギュラーフッターのサーファーには夢のような光景でした。
The Snakeという名のこのシークレットスポットに、ミックが再びトリップ。目的は、まもなくはじまるサーフランチプロに向けて、タイラー・ライトのトレーニングをアシストするため。その模様が上の動画『RETURN TO THE SNAKE(スネークに戻ってきたよ)』。冒頭にあるように、タイラーはサーフランチプロを病欠するという話。が、このビデオでは相変わらず豪快にかましてます。自分的には1:58からの、ヒザをクローズドに畳んだアップスが好きです。
ちなみに、こちらが『AIN’T NO WAVEPOOL』。ご覧になった方も多いと思いますが、見てない人はぜひチェックしてみてください。記事にもしましたが、ミックの引退試合の直前に、ケリー・スレーターがインスタで「引退したらThe Snakeに連れてって欲しい」と投稿したのもわかるクオリティーです。
■The Snakeはアフリカ北西部のモーリタニアにある説。
さて、The Snake。場所がどこか気になりますよね。
ミックもリップカールも場所がリークするのを徹底的に避けてて、いまだに公になってないのが現状。実は『The Inertia』や『STAB』といったサーフィンメディアをはじめ、『シドニー・モーニング・ヘラルド』や『ハフポスト』までが推測記事を掲載してます。各誌の読みは、アフリカ北西部のモーリタニアのポイントが濃厚という説。これは、Google Earthによる地形検証結果に加えて、ケパ・アセロのトラベルクリップに出てくる波が極似してるのが理由だとか。
これに対してケパは、自身のインスタで否定。
たくさんの人が、最近ミック・ファニングがサーフした場所は、2014年にぼくがサーフしようとしたところと同じか尋ねてくる。形態学的にすごく似てるからね。時間を取って調べてみたんだ。結果としては、違うと思ってる。波が小さすぎて、僕が行った場所ではサーフできなかった。いまもその場所について、昼夜問わず考えてる。ミックのクリップがフィーリングを呼び覚ますんだ。あそこに戻ってサーフするのを待ちきれないよ!
–ケパ・アセロ
まあ、似てるっちゃ似てるけど、あまりに小さすぎるし、わかりません。これとグーグル先生による検証を根拠に「ついにわかった!」的な記事を出すってのもどうなんでしょう・・・。
■ミック・ファニングのThe Snake波乗り体験談。
リップカールのサイトによると、ミックがThe Snakeに行ったのは、友達がミックにサーフクリップをみせたのがきっかけという話。
彼はこんな感じだった。「ヘイ、ミック。これを見ろよ! オレはこの波でサーフしたんだ。ミックとも一緒にやりたいけど、リークされるのが怖いんだ」
この波を、友達とだけでサーフィンしたい。彼のその思いは強く、簡単には行けないと思ったよ。でも、なんとか説得して、ついに信用してくれた。秒速で「GO」ってメッセージして、旅がはじまったんだ。
–ミック・ファニング
まるで狂ったように約束を守り切ったんだとか。裏切り者のユダのように、行き先については嘘をつき、近い友達や尊敬する人にも、どこに行ってるのか明かさなかったそう。
岸から20mのところで、6フィートの波が5kmも割れ続けるスーパーブレイク。The Snakeについてミックはこう言ってます。
ビーチで割れるっていう感じじゃないんだ。何本もの並行のラインが、らせんを巻いてはカールになり、スピード全開で炸裂する。長い距離の間に何度も、何度も。何度も!
ラインナップでは、セットをつかむために普通は水平線を見渡すよね。でも、ここではむしろビーチ側を向いて、ポイント寄りを見わたすんだ。
波打ち際で波が盛り上がり、押し出たとたん、すぐに吹き出してくる。凝縮された運動エネルギーが、岸に対してサイドに流出している感じ。フェイスを上ってはリップに入っていき、再び砂の棚に戻るんだ。
–ミック・ファニング
テイクオフは簡単。でも、そのあとは別のシナリオ。夜明けとともに、興奮状態のまま速攻でテスト。が、世界最速の男も最初の3本をミスるスタートだったとか。
ひとりきりでのサーフィンは難しいよ。他の人がいないとラインにセットしにくい。ホームのスナッパーは普段1000人のサーファーがラインナップしてて、彼らを通して波を把握できるんだけど。波をキャッチしようとしたら落ちちゃったし。初心者に戻った気がしたよ。
最初はビビってたってのもあるかな。チューブのなかでパンプしたけど、ガチガチでメイクできなかった。でも、だんだんつかめてきた。フォームボールに浮いたり、ときにはバンクでストールして、再びトップギアにシフトチェンジしたり。それを延々と続けていくんだ。
パドルアウトの場所から、5kmにわたってラインが続いていた。ずっと先に、まだサーフされてない巻き上げポイントがあるんだけど、離れすぎててカメラクルーもフルライドを撮れなかったね。
The Snakeをメイクできるグーフィーフッターって、世界で5人ぐらいしかいないんじゃない? 本当に優れたグーフィーならエンジョイできると思うけど。チューブの中で前方をチラ見しながら、パイをオーブンに入れて点火して、パンプし続けられるスキルが必要。レギュラーのぼくですら最初の2本で、この波、早すぎって思ったくらいだからね。
–ミック・ファニング
「パイをオーブンに入れて点火して」って(笑)。まあ、難しい波ということですね。The Snakeで特訓したタイラーも、サーフランチプロに出れずさぞかし残念でしょう。とはいえ、世界でも数えるほどの人しか体験できてない波に乗れたから幸せでしょう。ミックも、誰も知らない波を見つけるフィーリングはクールだって言ってるし。それこそThe Searchの本質でしょう。
The Searchシリーズにはロマンがありますよね。筆者もトム・カレンの時代からファンです。見ごたえのある作品がいっぱいあるので、ぜひ見てみてください。
リップカールのThe Searchサイトはこちら(英語)。
The SearchシリーズのYouTubeプレイリストはこちら(英語)。
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