【スポットガイド】果てなく続く様式美は人工によるもの〈スナッパーロックス〉。

アン-ナチュラル・パーフェクション。

エメラルドグリーンの海にベージュの砂。そこにパーフェクトなラインが帯をなして連なってくる。これぞレギュラーフッターにとって最高の波。人がいなければの話だけど……。Photo: WSL / Kirstin

Text: Junji Uchida

レギュラーフッターにとって理想のアリーナがいっぱいのCTツアー。ベルズビーチにJベイ、さらにはクラマス、制御次第でサーフランチといった、パラダイスが勢揃い。その口火を切るのが、いまスナッパーロックスで開催されている初戦のクイックシルバープロ・ゴールドコースト。会場のスーパーバンクはテイクオフからプルアウトまでの距離が長く、しかもチューブありカービングセクションあり、エアーのためのランプありの、どこまでも自由なラインを描ける夢のキャンバス。

その一方で、世界一混雑するポイントとも言われ、チキンなトラベラーだとひとたびバレたら容赦なくドロップインされることもしばしば……。昨シーズンでCTをリタイアしたビード・ダービッジのインスタをご覧ください。

 

Photo: Instagram / Bede Durbidge

 

〈レッドブル〉が昨年ドロップしたドローンによる『セッションズ』が本来のパラダイスの姿。戦場とはいえ、CT選手たちはこのロングウェイブを2人あるいは3人だけで乗れるのだから、なんとも羨ましいお話。

 

Video: Redbull『SESSIONS』

 

ゴールドコーストのポイントブレイクの多くはレギュラーの波。そのほとんどが、岬沿いの岩場+砂のボトムといった構造をしている。スーパーバンクも同様だ。

大会名称にはスナッパーロックスと謳われているものの、正確にはスーパーバンクと呼ばれる地帯全域がステージ。岬の突端寄りのスナッパーロックスと、そこから2kmほど先のキラにまで続く、壮大なサンドバンクだ。

これは自然にできた地形ではなく、岬の反対側を流れるツイードヘッド川の川底の砂水をポンプで汲み上げバイパスで送り、スナッパーロックス側に流し込むという人工によるアン – ナチュラル・パーフェクションというわけ。

(上)スナッパーロックスとはレインボウ・ベイの左突端の岩場のこと。そこから左に向かってキラへと続く2kmほどの砂の堆積地帯がスーパーバンク。ツイード川から流れてくる土砂に加え、ポンプ施設で汲み取った砂をパイプで輸送。結果、世界有数のロングウェイブボトムが誕生した。Artwork: WSL(下)WSLの動画による説明クリップ

 

Video: WSL

 

これにより、砂の枯渇によりまったく割れなくなってしまったかつてのヒノキ舞台、キラが復旧。スーパーバンクの愛称にふさわしい、レギュラーフッターにとって夢のようなポイントが生まれた。いいときには1.5km以上ものロングライドが可能。

しかも、スーパーバンクの面白さは距離だけでなく、毎日のように状況が変わるため、日々違うアトラクションを楽しめるという魅力もある。潮回りやうねりの向き、ストームなどのビッグサイズの要素の掛け算で、同じポイントなのに今日はどんな波なのかとワクワクしてしまう。

サイズがちいさいときにはファンボードに最高の、次から次へと現れてくるフェイスが遙か先まで続く。また、ストームが届いてサイズアップすれば、パーフェクトなシリンダーのようなチューブがキラのほうまでブレイクしていく。

とはいえ、北寄りの風のときはオンショアになり、パラダイスとは程遠いことがあるのも確か。そんなときには岬の裏側のデュランバー、通称Dバーにいくか、逆に北上してサーファーズパラダイスを超えた先にあるザ・スピットというポイントに行けばエンジョイできる。

1.5kmもの距離をグイグイ押してくれる感覚を、レギュラーフッターならただコンテストを観戦するだけじゃなく、死ぬまでに一度は味わっていただきたい。

パラダイス感満載の青いラインナップもいいけど、黄金色に輝くメロウな帯群もナイス。Photo: WSL / Joli

 

SPOTCHECK
  • ベストシーズン:夏
  • レベル適正:中〜上級者
  • ボトム:砂
  • ベストサイズ:4〜6フィート
  • スウェル:東うねり
  • 風向:南交じり
  • 潮回り:引き潮

【うねり】
スーパーバンクに波を起こすのは北東〜東からのうねり。オーストラリア大陸の北東に広がる珊瑚海にサイクロンができる12月〜3月がベストシーズン。2〜8ft(オージーサイズ)の波が期待できる。波の発生サイクルは月に2〜3度。持続期間はそれぞれ3〜7日間というのが平均的。冬は基本的にオフシーズン。東〜南東に開いたDバーやザ・スピットに行く機会が増える。スーパーバンクやカランビン、バーレーヘッズなどと違ってレギュラーのロングウェイブではないが、パンチの利いたビーチブレイクが味わえる。サイズ的にも2〜8ftの波が望める。原則的にビーチブレイクは満潮時、ポイントブレイクは干潮時が一層良くなる。
 
【風】
スーパーバンクの理想の風向きは南交じり。メインシーズンの1月〜4月はゆるめの南〜東風が吹く傾向がある。5月〜8月は南西〜南東風の日の割合が増える最高の時期。9月〜11月は北寄りの風がレギュラーのロングウェイブのフェイスを乱す。そして12月になると再び良くなるというサイクルだ。
 
参考:STORMRIDER SURF(英字)
書籍購入:AMAZON(英語版)

 

 

オーストラリアのサーフマガジン『スタブ』がスナッパー周辺のエリアガイドを制作。ミッチ・クルーズ(担当:カランビン)やジェイ・トンプソン(担当:バーレーヘッズ)、マーク・オクルーポ(担当:スナッパーロックス)が解説してます。オージー訛が強くわかりにくいけど、良くできているから見てみてください。下のスクリーンショットをクリックすると動画サイトにジャンプします。

Video: Stab’s Guide to the Gold Coast